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2018/5/13 サロン内記事
※以下はオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」で過去に投稿されたそのままの原文記事です。
2018年5月13日
【今夜は真面目に働いてまーす】
次に出す予定のビジネス書(というよりも、ビジネスマン層には『革命のファンファーレ』で、ある程度、浸透したので、もっともっとライトな層に届くような本)『僕たちはどう生きるか(仮)』の原稿を書いています。
気になる部分や、間違っている部分や、「もっと、こういう言い回しの方がいいよー」という部分があれば、コメント欄まで御意見ください。
書きかけの原稿の一部っす↓↓
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『経済が変わった』
僕らは今、「経済の変わり目」に立ち会っている。
まずは、そこを共有しておこう。
人間の経済活動の始まりは物々交換(これを「自然経済」というらしいよ)。
海で釣った魚と、誰かが山から採ってきたキノコを交換したりしていたんだけれど、ところが山に魚を持って行くまでに魚が腐ってしまうし、こちとらキノコが欲しいのに、キノコ屋は「今は、魚は要らねえよ」とワガママを炸裂させる始末。
他に魚が欲しい人を見つけるまでに魚は腐ってしまうし、ようやく「魚が欲しい」と言う帽子屋を見つけたが、こちとら「今は、帽子は要らねえよ」。
「これは困った。何か良い方法はないものか?」ということで、釣った魚を何とでも交換できて、さらには、どれだけ長時間保管していても腐らないという奇跡の取引アイテム「貨幣(お金)」が誕生。
そして、「貨幣」を媒介物とした「貨幣経済」へと発展した。
【「自然経済」から「貨幣経済」へ】
貨幣経済では、貨幣がないと何も手にすることができないので、人は貨幣を奪い合った。
貨幣が搭載している機能は凄まじい。
「保存」しておくこともできるし、魚とキノコの価値を比べる「尺度」にもなるし、何かと「交換」することもできる。超便利じゃん。
そりゃ、皆が欲しがるわけだ。
貨幣経済が更に進み、とりわけ大きな貨幣は「小切手」や「株式」といった“紙切れ”で取引されるようになった。
紙切れに「1000万円」と書いて、「この紙切れは1000万円の価値があるんです」と、もはや子供の〝おままごと〟みたいなことを言い出したのだ。
ただ、〝おままごと〟と一つだけ違う点は、「この紙切れは1000万円の価値があるんです」と言った人間には、「後で必ず1000万円の貨幣を払ってくれる」という「信用」があったということだ。
そこに「信用」さえあれば、1000万円の買い物ができるようになった。
それの進化版が『クレジットカード』だよね。
ちなみに「クレジット」を日本語に訳すと「信用」だ。
こうして、「信用」を媒介物として商品やサービスの交換が行われる「信用経済」がスタートした。が、しかし、信用経済は、会社や一部のお金持ちだけのもので、僕らのような一般人レベルでは、まだまだ貨幣経済のままであった。
「信用がお金になる」「お金とは信用そのものだ」と、お金持ちや、お金に詳しい人からいくら言われても、僕らは実生活で小切手なんか使っちゃいないし、クレジットカードは大人になるまで使わないし、信用がお金になる経験をあまりしていないので、全然ピンとこなかった。
ところがここ数年、少し騒がしい。
2016年、年末。
SMAPファンが、インターネット上で資金を募り、新聞の一面を買い取り、「私たちはこれからも応援し続けます」というメッセージを届けた。
このとき、集まった金額は3910万9404円。
発起人はジャニーズ事務所でも何でもない、知名度も何もない二人の会社員と一人の主婦だ。
SMAPがこれまで積み上げた信用と、「あなたのことは知らないけれど、あなたがSMAPファンなら、あなたに託したお金は絶対に素敵な形で還元してくれる」という「信用」が、4000万円近いお金を作った。
この本の冒頭でも紹介したが、これが、信用を換金する装置「クラウドファンディング」だ。
そして2017年、8月。
「Polca(ポルカ)」というサービスがスタートした。
ポルカは、友達同士の支援サービスだ。「フレンドファンディング」と謳っている。
クラウドファンディングと違う点は、支援募集の公開範囲を指定できるということ。
ツイッターで広く公開することもできるし、たとえば、LINEグループだけに限定公開することも可能だ。
これにより、かなり私的な企画が立ち上げやすくなった。
「焼肉、奢って」なんてのもアリ。
もちろん「焼肉、奢って」という企画をクラウドファンディングでも立ち上げることは可能だけど、公開範囲がフルオープンなので「自分で働いて稼いだお金で買え!」という輩が絡んでくるリスクが高い。
「何をラクしようとしているんだ! 俺がストレスの対価として、ようやくお金を手にしているのに、お前ときたら!」という言い分を持った人達だ。
この本を手にとっているあなたも、もしかしたら、そっち側の人かもしれない。
大丈夫、今は世の中の99%が、そっち側だ。
ただ、一つ問いたい。
たとえば、あなたの仲の良い恋人や友達や後輩が、「今、お金がないので、今夜は焼肉を奢って」と、あなたに言った時に、あなたは「何をラクしようとしているんだ! 俺がストレスの対価として、ようやくお金を手にしているのに、お前ときたら!」と説教を始めるだろうか?
いいや。
きっと、あなたは「もう、しょうがねえなぁ。この借りは、いつか返せよ」と言って、焼肉をご馳走するんじゃないかな?
もしくは、「もう、しょうがねえなぁ。たしかに、この前、オマエに助けてもらったしな」と言って、焼肉をご馳走するだろう。
あなたが、あなたの友達を「信用」しているからだ。
もう少し分解して説明すると、あなたの友達が〝焼肉をご馳走するに値する信用〟を貯めていたからだ。
だから、あなたは友達に焼肉をご馳走する。
ポルカは、そのやりとりをインターネット上で可能にした。
こうして、会社や一部のお金もちだけのものであった『信用経済』に、僕らのような一般人も参加できるようになったというわけ。
【「貨幣経済」から「信用経済」へ】
現代、個人の信用は換金できるようになった。
たとえニートであろうと、ツイッターで有益な投稿を繰り返して、フォロワーの信用さえ稼いでいれば、お金を作ることができるようになったのだ。
お父さん世代は「働け」と言うかもしれないけど、信用経済においては、「働く」の定義が、「お金を稼ぐ」から「信用を稼ぐ」に変わってくる。
正社員よりも収入が多いニートが出てくる。
部長よりも豊かなホームレスが出てくる。
数百年に一度の大変革期だ。
経済の変わり目なのだから、道徳観の摩擦があって当然だよね。
きっと今の若い子達は、これまでの、どの時代よりも「最近の若いヤツは…」と言われると思う。
ただ、若い子もそうだけど、なにより若者の行動に苦言を呈するオッサン連中は、これだけは押さえておいた方がいい。
あらゆるルールが変化するこの時代に、確かなことは一つだけ。
この流れはもう止められない、ということだ。
しるしをしよう!(気になる文を抜粋)
ファクト(事実に基づいた内容の文) + 気づき
よく「信用をお金に替える装置」とか「信用を換金するシステム」といった言葉を耳にします。それがクラウドファンディングであるという説明なんですが、自分個人としては少し解釈に違和感をおぼえています。信用をしています。あなたには信用がおけます。という事実だけがお金に結び付くとも思えません。
それは、例え信用できる人であってもそのクラウドファンディングをする「目的」が支援しようとする者にとってつまらないものである場合や、心を1ミリも動かせない場合はおそらく換金できないんですよね。お金を企画の真ん中に集めようとする場合、賛同者を集められるかが鍵になります。
例えば悪い例だと、「ただただ贅沢な食事をしてみたい。」の類いは案外身内(ごく近しい間柄)からの支援は得られますが、個人的な願い事にすぎず、スルーされてしまいます。
SMAPのファンの例は特別で、会社員と主婦個人が貯めてきた信用を使ったのではなく、SMAPとファンの間で築き上げてきた信用の形の現れですね。
ありがとうの矛先がちゃんとした的さえあればそこに向けられるといったものです。
これ(クラファンの仕組み)を逆手にとった詐欺も今後現れるかもしれないですが、まずはその詐欺師は信用を稼がなくちゃいけないわけですよね。
そうこうするうちに詐欺をはたらくつもりの人が善人になるといった嬉しいねじれが今後起こるのかもしれません(笑)。
クラウドファンディングは資金提供者に対するリターン(見返り)の形態によって下記の3類型に大別される。
- 金銭的リターンのない「寄付型」
- 金銭リターンが伴う「投資型」
- プロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入することで支援を行う「購入型」
エッセンス(本質) + 学び
以前からあったクレジットカードについて触れると、このクレジット(信用)という言葉でもうすでに嫌がる人が多かった。いまだに「私はカードは持たない現金主義だ。」というようなシーラカンスのような方もいらっしゃる。ディスるつもりは1ミリもなく。
クレジットカードはわかりやすく説明すると、カード会社(金融機関)があなたを信用して限度額を決めて立て替えてくれるという仕組みです。その代わり立て替え金額にプラスして利子をくださいな、というもの。
ちょっと前ですがおもしろい事に、ファッション通販サイトのZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが2016年11月に始めた「ツケ払い」という決済方法が話題を集めました。
これもZOZOTOWNが⇒お客様を信用しての建て替えですが、その裏では決済会社GMOペイメントが⇒ZOZOTOWNをある意味では信用して立て替えて支払い、お客様代金の回収をしています。
つまり、信用のハードル高さの問題もありますが、いまではお金の出どころは金融機関だけではなく、アパレル業界、その他小売りから最終的には個人からのダイレクトに至るまで、裾野が広がっているのです。
ひと昔前では、金融機関がお金を貸せる限度=クレジット枠を個人の収入に応じて決めていました。
それはちゃんと理にかなっていて、返済能力がベースになていますし、何より稼ぎの多さ=社会的信用でありました。勤続年数が長いと、会社にとって、延いては世の中にとって「この人は組織でちゃんと機能して貢献し続けた人だ。」という信用を暗黙の了解で得られたことになります。だからクレジット枠も増えたりする。
堅実と言えば堅実で、本来の信用を計るものさしはまだ数値化できていません。
なのでこういった経歴が物語る仕組みなのかもしれませんが、金属年数が長く収入が多い人が一概に素晴らしく、信用のおける人だと言い切って良いものかどうかは判断の難しいところですね。
まとめ(総括)
時代によって変化し続ける信用の定義と貯め方が変わってきました。
その昔、小売り業がお代の立て替えをしてくれる時代が来ることなんて想像できたでしょうか。スマホをかざしてお店で決済できてしまう時代。それが信用の正体ということなんですね^^
アメーバのように形を変える「信用」。
いつまでもその正体を見失ってはいけませんね^^
おしまい
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